嗅覚障害
記事監修者
医療法人華風会 理事長 久保 伸夫
■日本耳鼻咽喉科学会専門医
■日本アレルギー学会専門医
関西医科大学卒業後、ウェイクフォレスト大学、バーバード大学に留学。
現在は、関西医科大学耳鼻咽喉科助教授、関西医科大学男山病院教授、大阪歯科大学耳鼻咽喉科准教授を歴任。耳鼻科手術、アレルギー疾患のエキスパート。鼻呼吸の研究も行い、立体マスクの開発や呼気ガスの成分測定・分析を行う。その経験から水素ガス吸入の効果と有効性を検討し、水素ガス吸入の啓蒙に努める。
ヒトはこんな風に匂いを感じている!
鼻は匂いを感じ取ったり、呼吸をする役割を持ちます。また、この際に空気中のチリやゴミ、細菌やウイルスが身体の中に侵入しないようにフィルターとしての役割、体内に入ってくる空気の温度や湿度を調整する複数の重要な役割を担っています。
匂いを嗅いだり、鼻での呼吸動作に伴い、匂いの成分が鼻の奥(鼻の付け根あたり)にある嗅粘膜に到達し、それが電気信号に変わって大脳に伝達されることによって匂いとして感じ取ります。これが匂いを感じる嗅覚の仕組みです。
また嗅覚は味覚とも深い関係があります。これは味を感じる時に、舌で感知する味覚と合わせて口から鼻に空気が通る際に感じ取る香りとが合わさるためです。そのため、風邪を引いたり、鼻炎で鼻が詰まっていたりすると味が分かりづらくなったりするわけです。
嗅覚障害とは-種類と原因-

こんな症状があったら嗅覚障害かも?
☑︎匂いを全く感じない
☑︎匂いが分かりづらい
☑︎いつもと違う匂いがする
☑︎何を嗅いでも同じような匂いがする
嗅覚障害とは匂いが分かりづらくなったり、匂いが全く分からなくなったりする状態です。
嗅覚障害は匂いを感じる経路のどの部分で問題が起きるかによって3つに分類されます。
気導性嗅覚障害
鼻から吸入された匂い成分が、嗅裂部(匂いを感じ取る細胞がある鼻腔上部)に到達しないことによって生じる嗅覚障害です。
原因として慢性副鼻腔炎が最も多く、特に鼻茸(鼻ポリープ)を伴うことが多いです。その次にアレルギー性鼻炎が原因として認められます。
嗅神経性嗅覚障害
嗅細胞が障害を受けることによって起きる嗅覚障害です。新型コロナウイルスによる嗅覚障害も嗅神経性嗅覚障害に分類されます。ウイルス感染によるもの嗅細胞が障害を受ける感冒後嗅覚障害と、顔面のケガなど外傷による嗅神経性嗅覚障害、薬剤による副作用で生じる薬剤性嗅覚障害があります。
中枢性嗅覚障害
嗅覚経路(匂いに関わる神経回路)が障害を受けることによって生じる嗅覚障害です。頭部外傷や膿腫症、脳梗塞、パーキンソン病、アルツハイマー型認知症など脳に関わる病気が原因となることが多いです。そのため、嗅覚障害だけでなく、認知能力や識別能力の低下も認められるのが特徴となります。
嗅覚障害の検査
嗅覚障害は原因によって治療のアプローチが異なるため、まずは検査を行い、原因を明らかにします。
嗅覚障害のうち、最も多い副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎が原因となる嗅覚障害は、鼻内視鏡検査やCT検査で診断が可能となりますが、それ以外の嗅覚障害は画像検査では、異常を捉えることができないことも多いです。それゆえ、問診から原因特定のヒントを探っていくので、問診も非常に大切になります。
主な検査
静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)
アリナミン注射液(注射するとニンニクの匂いがする)を静脈に注射し、注射してから匂いを感じるまでの時間と匂いを感じなくなるまでの時間を測定します。静脈から肺を経由して息を吐く際に鼻の後ろ側から匂いを感じ取れるかが分かります。
匂いを嗅いでも分からないケースで、この検査で反応があった場合には、嗅神経は残っていると推測できるわけです。
前鼻鏡検査・内視鏡検査
鼻からファイバースコープを挿入し、鼻の中を観察します。鼻粘膜の炎症の度合を判断することが可能です。嗅覚障害の中で最も多い気導性嗅覚障害の場合は、この検査で診断がつくケースが多いです。
画像検査
嗅覚障害の治療
嗅覚障害の治療は、原因によって異なります。
アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)が原因と考えられる場合には、それぞれに適用される治療を行い、改善を試みます。
具体的には、鼻洗浄、ネブライザー治療やステロイド剤の点鼻や抗生物質などの内服が挙げられます。
これらの保存的治療で効果が認められない場合には、手術を検討する必要があります。
好酸球性副鼻腔炎という難治性の副鼻腔炎が原因となる場合は、手術を行なっても繰り返す場合も多く、並行して定期的な内服治療が必要になるケースが多いです。
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